パニツムマブとの関連が疑われた間質性肺疾患の3例
稲田めぐみa 下方 智也a 杉下美保子a 長谷川好規b 安藤 雄一a
a名古屋大学医学部附属病院化学療法部
b同 呼吸器内科
パニツムマブ(panitumumab)は上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)に対する完全ヒト型モノクローナル抗体であり,日本では2010年6月に治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対して認可された.当院では2011年5月までに13例に使用し,このうち3例においてpanitumumabとの因果関係が否定できない間質性肺疾患(interstitial lung disease:ILD)を経験した.3例は全例に肺転移があり,2例に喫煙歴があり,1例にpanitumumab投与前にILDを否定できない画像所見を認めていた.ILDの診断時期はpanitumumab開始日からそれぞれ54日,15日,15日であった.1例はILDの診断より22日後に死亡したが,他の2例は生存中である.死亡した1例を含む2例ではステロイドパルス療法が行われたが,他の1例は薬剤中止のみで回復した.日本人におけるpanitumumabによるILDの頻度,病態,危険因子にはまだ不明な点が多いが,同じEGFRを標的とするゲフィチニブ(gefitinib)やエルロチニブ(erlotinib)ではILDが重大な副作用であることからも,十分な注意が必要である.
Received 6 Jun 2011 / Accepted 31 Aug 2011
連絡先:稲田 めぐみ
〒466-8560 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65
a名古屋大学医学部附属病院化学療法部
日呼吸誌, 1(1): 46-50, 2012