肺結核治療のエタンブトール投与で発症し失明に至ったLeber遺伝性視神経症の1例
張 孝徳 瀬戸瑠里子 小林 祐介 酒井 茂樹 中村 敬哉 江村 正仁
京都市立病院呼吸器内科
59歳男性.肺結核症と診断され,エタンブトール(ethambutol:EB)を含む治療を副作用なく6ヶ月間で完了した.3ヶ月後に視力低下を認め,その後2ヶ月間で急速に進行し,ほぼ失明した.家族にLeber遺伝性視神経症(Leber's hereditary optic neuropathy:LHON)患者が3人いることが判明し,遺伝子検索により特異的なミトコンドリアDNA変異を確認しLHONと診断した.LHONは母系遺伝形式をとる,網膜神経節細胞の特異的変性をきたし,急性ないし亜急性に視力低下をきたす疾患である.LHONは通常若年発症であるが本症例は中高年での発症であり,過去の8例の報告例と同様にもともとミトコンドリアの異常があったが発症せず,EB投与が発症の契機となったと推測された.EBは抗酸菌治療に頻用されており,投与に際して眼疾患の家族歴聴取が重要であると考える.
Leber遺伝性視神経症 エタンブトール 結核治療 視力低下
Received 2 May 2011 / Accepted 25 Aug 2011
連絡先:張 孝徳
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京都市立病院呼吸器内科
日呼吸誌, 1(1): 42-45, 2012