肺類上皮細胞肉芽腫と好酸球浸潤を認めた原発性胆汁性肝硬変の1例
原 悠a,b,d 千先 康二c 新海 正晴a,d 叶 宗一郎a 金子 猛d 川名 明彦a
a防衛医科大学校内科学講座2( 感染症・呼吸器)
b自衛隊福岡病院内科
c同 胸部外科
d横浜市立大学附属市民総合医療センター呼吸器病センター
症例は1年前から胆道系酵素の上昇を指摘されていた57歳女性.1ヶ月前から乾性咳嗽が出現し,胸部X線にて両側下肺野斑状影を認め当科に入院となった.経気管支肺生検で,非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認め,アンギオテンシン変換酵素高値とツベルクリン反応陰性所見等から肺サルコイドーシスと診断されたが,肺門リンパ節腫大を認めず,下肺野優位の陰影分布,気管支肺胞洗浄液中CD4/8比率正常,肺好酸球浸潤,気管支粘膜網目状毛細血管怒張の欠如といった肺サルコイドーシスとしては非典型的所見が多く存在していた.一方,抗ミトコンドリアM2抗体が高値であり,肝生検にて門脈域へのリンパ球浸潤・胆管の消失・細胆管の増生・類上皮細胞肉芽腫・病変周囲の好酸球浸潤を認め,Scheuer分類II~III期の原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis:PBC)と診断された.本例は,肺・肝ともに類上皮細胞肉芽腫と好酸球浸潤を認める共通した病理像であり,PBCと肺サルコイドーシスの併存ではなく,PBCによる肺病変と考えられた.
サルコイドーシス 好酸球浸潤 肉芽腫性肺病変 原発性胆汁性肝硬変 抗ミトコンドリアM2抗体
Received 19 Apr 2011 / Accepted 13 Sep 2011
連絡先:原 悠
〒359-8513 埼玉県所沢市並木3-2
防衛医科大学校内科学講座2(感染症・呼吸器)
日呼吸誌, 1(1): 35-41, 2012