漢方治療が奏効した全身症状を伴うサルコイドーシスの1例
村井 政史a 山口 哲生b 三潴 忠道a 矢野 博美a 犬塚 央a 田原 英一a
a飯塚病院東洋医学センター漢方診療科
bJR 東京総合病院呼吸器内科
症例は44歳男性.当科入院の7年前にぶどう膜炎症状で発症し,その後両側肺門リンパ節腫脹が認められ,諸検査結果からサルコイドーシスと診断された.5年前から両肺野に粒状影と浸潤影が出現して次第に増悪し,副腎皮質ステロイドホルモン薬や免疫抑制剤,抗菌薬などの西洋医学的薬剤が投与されたがさまざまな副作用のために治療を継続できなかった.痛み,しびれ,下痢,全身倦怠感,息切れなどの全身症状の悪化に加えて肺病変がさらに増悪したために漢方治療を試みることとなり,当科に紹介され入院となった.漢方医学的な病態を把握して漢方薬を投与することにより,全身症状は軽減し,胸部X線像でも明らかな改善が認められた.西洋医学的治療が無効もしくは継続使用できない進行性のサルコイドーシスに対して,漢方治療を試みる価値があることを示した1例である.
Received 16 Feb 2011 / Accepted 8 Sep 2011
連絡先:山口 哲生
〒820-8505 福岡県飯塚市芳雄町3-83
飯塚病院東洋医学センター漢方診療科
日呼吸誌, 1(1): 9-13, 2012